偽恋人の恋愛事情



帰ってやるよ

お望みなら

それでもう一回文句言ってやる


「…ここに戻ってくる?」

え?

「ぶちかましてきた後、戻ってきてくれる?」


「…戻ってきて、欲しいんですか?」


少し、不安そうな顔で

何かを懇願するように私をじっと見つめる

理由を尋ねるように見返すと一度だけ目を逸らして、再び私をみる


「…うん」

…



楓くん

それはなんでですか


どうしてあなたは、私をこの家に置いてくれたんですか

助けてくれたんですか

偽恋人だからですか?

どうして本物でもない赤の他人に、この私に

そんなに優しくするんですか


私が哀れだから?

始めたのが自分だから?

持ちつ持たれつだから?


それとも

なにか、他に理由があるの?



私は…何度も何度も

この前代未聞の関係と、そこから生まれてしまったあってはならない感情から

目を逸らしてきた


でも、きっと

雨の夜に私を迎えにきたあの日から

いやもしかしたらもっと前から


この関係では御法度の、特別な感情があなたに対して存在し続けている


認めてしまえば、自分が愚かで、ダサくて、哀れで

頑張って背を向けてきたのに…



「俺は、雪音にそばにいて欲しい」



もう限界だ


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