偽恋人の恋愛事情
生徒会長としての威厳とか
偽物の関係性とか
こんな情けない助けを求めるなんて…って思う人間としての常識とか
頼れって言われたからとか
偽物でも恋人だからとか
そんな上っ面の言い分なんて…関係なく
今、私は
無性に
鈴本くんに会いたい
鈴本くんの隣に行きたい
心地のいい、息のしやすい、あの空間に行きたい
鈴本くんが恋しい
慰めてほしい
癒してほしい
助けてほしい
受け入れてほしい
なんて強欲な人間なんでしょう
これじゃ、あのクソジジイ達に見限られたって仕方がない
でも私も人間だもの
今まで押さえ込んできたいろんな感情が、いろんな欲望が爆発してしまったんだ
存在しない母親に縋り付くことはできないから
雨に濡れた画面に雨に濡れた指で触れる
『鈴本くん、雪音です。今大丈夫ですか』
大丈夫って言って
早く返信して
こんなところにびしょ濡れで立っていたくない
お願い
ぎゅっと…雨に濡れた画面を雨に濡れた制服の胸に抱える
「鈴本くん…」