僕の欲しい君の薬指


意味を理解した途端、羞恥心に殺されそうになった。自分に嫉妬するなんて阿呆の骨頂ではないか。こちらは恥ずかしさに顔を火照らしていると云うのに、相手はこれまでにない嬉々とした表情を崩さない。



「あ…天糸君は、最初から私が天糸君に溺れるって分かっていたの?」

「どうして?」

「だ、だって…この家を準備していたし、私の家の片付けだって済ませてたから」

「なーんだそんな事?月弓ちゃんが僕を愛してくれるならこの家に閉じ込める。愛してくれなかったら引き摺ってでもこの家に監禁する。そう決めていただけだよ。月弓ちゃんはどのみち、ここに来る運命だったの」

「……」

「でも良かったぁ。月弓ちゃんが僕を愛してくれなかったらここで調教と拷問をして洗脳しなくちゃいけなかったんだもん」

「え…」



嗚呼、そっか。そうだった。この子の愛は重くて狂っていて歪んでいるんだった。甘い仮面の下で息を潜めている彼の素貌は、とても妖艶で危険なのだ。



「質問コーナーは一旦お終い。お預けばかりで苦しいの」



“早く月弓ちゃんの体温に溶かされたい”



艶笑で美しい貌を飾った彼が腰を沈めた瞬間、余りにも大きな快感に私の呼吸が刹那的に停止した。


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