『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
「はい、仁科です」
『こんにちは、お世話になります。白星会医科大学病院の久我です』
「お世話になっております」
『先ほど、如月さんがお見えになったので、検査結果と法的証明書をファイルした物をお渡ししました』
「有難うございます」
『仁科君宛てにたった今、メールでお送りしたんですけど、届いてますかね?』
「あ、ホントですか?今確認します」
久我医師から電話を受け、メールボックスを開くと、一分前に検査結果が届いていた。
「届いてます!」
『開いて貰えば分かると思いますけど、父権の結果報告は肯定確率99.99%以上、又は0%だけなので、白黒はっきりと必ずどちらかの結果になることを前提として。今回の検査結果は0%という結果になりました。唐沢さんへの報告もしてありますので、ご安心下さい』
「有難うございます、お手数お掛け致しました」
『いえ、また何かあったらご連絡下さい』
「本当に有難うございました。失礼致します」
通話を切り、胸を撫で下ろす。
まぁ、自分じゃない確信はあったけれど。
それでも、万が一、いや億分の一くらいの確率で自分だったらどうしようと脳裏を過ったのは確かだ。
如月がデスクの上に置いて行った名刺を元に、すぐさまあの女に電話をかける。
「もしもし、仁科です」
『……はい』
「病院の方から検査結果が届いてると思うけど?」
『えぇ、来たわ、さっき』
「そういうことだから。事前の説明でもあったと思うけど、世界基準の十倍の正確率で、父権の結果報告は肯定99.99%以上、又は0%だけしか存在しない。今回の結果は0%ということだから、お腹の子の父親は俺じゃない。こちらは法的書類も揃えたから、裁判するならすればいい。結果は同じだがな」
『っ……、もういいわよっ!』
「それと、二度と連絡して来るな」
言い返す言葉も聞かずに切ってやった。