『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす

翌日。

「芽依、エトワールホテルに十七時な」
「現地集合ですか?」
「あぁ、俺はちょっと人と会う約束してるから」
「そうなんですね」
「十八時開宴だから、少し早めに会場入りするといい」
「分かりました」

昼前に自宅マンションへと到着し、俺は仕事に使う資料やパソコンを鞄に詰める。
そんな俺を心配そうに見つめる芽依。

「これから実家で親父と打ち合わせだから」
「えっ、そうなんですか?」
「ん」
「少し休んでおくといいよ」
「……はい」

響さんは忙しそうにパーティー用の衣装一式も手にして自宅を後にした。
私はキャリーケースの荷物を片付け、部屋の掃除と洗濯をする。

何てことない土曜日。
この部屋にいられるのも今日が最後。

予め纏めておいた荷物に、メイク道具やその他の日用品などを詰め込んだ。
冷蔵庫にある食材が無駄にならないように常備菜を作る。
それから、詰め替え用の洗剤等を補充して、自分に出来ることを全て行った。

「さてと、そろそろ準備でもしなきゃね」

シャワーを浴びて、パーティー用の支度をする。
髪を乾かし、アイロンでふんわりと巻いて、カスミソウのような小花のピンで緩く纏め上げた。

メイクは上品かつ清楚に。
アイラインは控えめに、けれどアイシャドウは色っぽくしっかりと。
マスカラもチークもパーティー仕様に少しくっきりと施す。
普段はヌーディーな色目のグロスを心掛けているけれど、今日ばかりはほんの少しだけ艶っぽく、オレンジがかった桜色のティントを乗せた。

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