『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
好きな人はいます

この十年あまり、毎月のように無理やりさせられていた『見合い』の裏事情をとうとう副社長に話してしまった。

私がキサラギ製薬の社長の娘だということは、履歴書を見れば一目瞭然だけれど。
副社長は今までそれに一度も触れて来なかった。

ダメもとで受けた入社試験。
四次試験まであって、いつ落されてもおかしくない状況だったのに。
秘書の求人募集自体は、誰付きの秘書かは不明だった。
採用後の手続きで本社を訪れた時に、秘書課の部長から辞令書を頂いた。

今でもあの時の高揚感を忘れはしない。


実の兄が結婚したのは二年前。
なかなか子供が授からないこともあって、半年ほど前に夫婦で検査したところ、兄に原因があると判明した。
“子供は授かれない”と。

それからというもの、両親の落胆具合は酷いもので。
海外の有名な病院へも検査に行ったほどだ。
けれど、結果は変わらず。

そして、辿り着いたのが『如月の血を引く子を』という、世にも恐ろしい答えを弾き出した。
その矛先が向いたのが、私だ。

私が婿を取って跡を継がせるというのではなく、私が産んだ子を兄の子として育てるという考え。
常軌を逸している。
いつの時代なの?
今の時代でそんな考えに至るだなんて、腐ってる人間でしかない。

私はいつだって要らない娘。
兄の役に立てるなら、血肉を捧げろと言わんばかりの朽ちた愛情。

そんな家族のことを知られたくなかったのに……。

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