うた×バト〜思いは歌声にのせて〜
『これは面白い! フィールドそのものは変えられないが、天気や時間は変えられる。そこを利用したエフェクトだ!』

 キョウの解説を聞きながら、このエフェクトを作ってくれた藤子ちゃんを思う。
 お兄ちゃんにも許可を取って、この夜になるエフェクトを使わせてもらったって言っていた。
 私のイメージにピッタリだからって。

 私のことを考えて作ってくれたエフェクト。
 三人が私が全力を出せるようにって作ってくれた歌と技。

 私はみんなの夢を……思いを背負ってる。
 負けるわけにはいかない。

 でもそれは相手も同じ。
 彼もしっかり感情を乗せた防御の創作歌を奏でた。

 ……でも、完全防御となるには遠い。

「ラブちゃん!」

 相手も準備が整ったのを見届けてラブちゃんに呼び掛ける。
 同時に、構えていたブーメランを思い切り投げるラブちゃん。
 ブーメランは相手の赤い“ヒトガタ”に向かい、彼のオオカミの“うたアニ”が受け止める。

『ヒュー! たえろぉ!』

 叫んで願っていたけれど、オオカミのヒューは数秒耐えただけでブーメランに弾かれてしまう。
 彼のHPが下がっていき、私より10下回った。

『勝者! 金井流歌ぁぁぁ!!』

 キョウの勝利のアナウンスに、勝ったんだと自覚した。

 ふぅ、と息を吐いて喜びにひたる。
 今はまだ、決勝への不安は考えないことにした。
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