うた×バト〜思いは歌声にのせて〜

「ねえ、あの子長澤絢(あや)じゃない？　子役の」
「あ、本当だ。生で見るとホントかわいいね」

　二人の言葉で私も気づく。
　そうだ、あの子七歳から色んなドラマに出てる天才子役って言われてる子だ！
　この学園に入学してたんだ……。

　そういえば歌も得意でいくつか曲出してたっけ、と思い出す。

「そっか。まあ、俺も同じだけどな」

　ニカッと笑った横山くんは同じチームの人らしい男子生徒の肩に腕を乗せた。
　既に仲が良さそうで、横山くんのコミュ力が羨ましいなとちょっと思ってしまう。

「陽向くんと長澤さん仲良さそうだね」
「やっぱりあの話は本当なんだ」

「あの話？」

　長澤さんを見て話しを続ける二人に首を傾げる。

「ん？　ああ、《S-JIN》のメンバーと長澤絢が親しいって話」
「なんか、大地先輩と長澤さんが幼馴染らしいよ？」

「へぇー……よく知ってるね？」

　そんなプライベートな話、どこで知ったんだろう？

「まあ、たまたまなんかの音楽雑誌の対談で読んだんだよね」
「私たち、音楽関係の雑誌には一通り目を通してるから」

「そうなの？　凄いね、二人とも」

　驚いて本気の称賛の言葉を贈る。
　だって、雑誌なんて興味のあることが書かれてなかったら買うことなんてないもん。
　それなのに音楽関係だけとはいえ一通り目を通してるなんて……二人の音楽に対する姿勢が垣間見えて純粋に凄いって思った。