うた×バト〜思いは歌声にのせて〜
 イメージとちょっと違うことに驚いていると、その二人の視線が私に向く。

「で、君は食べないの?」
「ちっこいんだからたくさん食べないと。あ、でも俺よりは大きくならなくていいからな?」

「え⁉ た、食べてます!」

 指摘されて、慌ててジャムをつけた状態で止まっていたコッペパンを口に入れる。
 もぐもぐと食べている間も二人は私に話しかけてきた。

「それにしても何でそんな帽子を?」
「眼鏡も何か似合ってないし……奏月の妹ならブサイクってわけじゃないだろ? 何で隠してんの?」

「うっ……」

 食べ物を飲み込んで、言葉に詰まる。
 千代ちゃんたちにも言われたけど、やっぱりこの帽子目立っちゃうのかな?

 や、違うか。顔を隠そうとしてるのが気になるんだよね。
 ……なんて答えよう。

「二人とも、あんまり突っ込まないでやってくれよ」

 答えに困っていると、お兄ちゃんが間に入ってくれた。

「隠したい事情があるんだよ。それに流歌は目立ちたいタイプじゃないし」

 お兄ちゃんの説明のおかげで先輩たちはそれ以上追及しないでくれる。
 ちょっとヤンチャなところもあるけれど、こういうときは頼れるお兄ちゃんだなって思う。

 ありがとう、お兄ちゃん。

 私はミルクを飲みながらひっそりと感謝した。
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