うた×バト〜思いは歌声にのせて〜
 そう、これが《シング・バトル》。
 目立つのが苦手な私でも、“ハコ”に入って顔が見えない状態でなら歌うことが出来ると思った。
 だから私はこの星彩学園に来たの。

 《シング・バトル》のプレイヤーとしてなら、大好きな歌を思い切り歌えるって思ったから。

 だから私はこの学園で成長して、絶対に《シング・バトル》のeスポーツプロプレイヤーになるんだ!

 そんな決意を新たにしていると、バトルを終えた二人がプレイルームから出てきた。

 二人ともそれぞれのクラスの人たちにすぐ囲まれちゃう。
 雄翔くんはA組のみんなから称賛を浴びていて照れ臭そうにはにかんでいた。

 出遅れて近づけそうにないなぁって思ったけれど、人垣の間から雄翔くんが顔を出す。
 そして目が合うとニコッと笑ってくれた。

【みてくれた?】

 明らかに私に向かって雄翔くんの口が動く。
 思わずコクコクと激しく首を縦に振ると、嬉しそうに二ッと笑ってくれた。

「っっっ~!」

 まるで私に見て欲しくて頑張ったって言ってるみたいに見えて、声にならない悲鳴が出ちゃう。

 かわいい! カッコイイ! ドキドキってして、息がまともに吸えないよ!

 赤くなった顔を隠すように帽子のふちを引っ張って、私は雄翔くんの笑顔を噛みしめた。

 ……本当、過剰ファンサだ。
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