うた×バト〜思いは歌声にのせて〜
 明るいのに優しい光は、不思議な魅力があって目が離せない。
 綺麗な満月をちゃんと見たくて、度が入っていない眼鏡も外す。

 この眼鏡実は無色のサングラスで、目の色が薄いからつけているだけなんだ。

 レンズ越しじゃない満月を見上げて、穏やかな気持ちになる。
 でもどこかワクワクした気持ちにもなっちゃう。
 満月の不思議な魅力のせいかな?

 こんなときは歌いたくなるの。
 言葉に表せない高揚した気持ちを歌で表現したくなっちゃうんだ。

 歌いたくてうずうずしてきた私は、スマホだけを持って部屋を飛び出しそのまま外に出た。

 部屋で歌ったら他の部屋の子に気づかれちゃう。
 それだけなら良いけれど、万が一聞かせてって来られたら困る。
 人前では、歌おうとしても声が出なくなっちゃうから……。

 だから、人がいなそうな外に向かった。
 寮が施錠されるのは夜の九時だから、まだ三十分くらいは大丈夫。

 私は女子寮と校舎の間にある花壇まで来ると、その中央に立って周囲を見回した。

 門限三十分前だし、他の生徒がこの辺りにまで出てくることはないはず。
 それを目でも確認すると、私はスマホを操作しはじめる。

 ちょっと眠そうにしているラブちゃんが現れて、画面に出てきた吹き出しに【なあに?】と文字が表示された。
 眠そうにしているところ悪いなと思ったけれど、私はマイクのボタンをタップする。
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