うた×バト〜思いは歌声にのせて〜
「流歌、本当に歌えるの?」
「ごめん、さっき歌えない流歌を見たらちょっと不安になっちゃって」

 千代ちゃんも少し眉を下げて不安そうな顔をしていた。

「あ……」

 そっか、私が歌えない場合二人が作った曲が無駄になっちゃうんだ。
 チームだから、誰か一人が役割を全うできないと全部がダメになっちゃう。

 千代ちゃんと千絵ちゃんは友だちだけど、それ以上に《シング・バトル》のために一緒に頑張る仲間なんだ。
 チームは一蓮托生。
 二人を不安にさせたままじゃダメだよね。

「大丈夫、人前で歌うのが苦手なだけだから。“ハコ”に入っていればちゃんと歌えるよ」

 私は二人の不安を吹き飛ばすように笑顔を見せる。
 千代ちゃんたちの不安を払しょくさせるためにもちゃんと歌えるところを見せよう。
 私はそう決意した。

***

 交渉の末、吉岡さんは二年生の先輩たちが使っていたルームを早めに交代してもらえることに成功していた。

 先輩相手に交渉して交代してもらうなんて……。
 吉岡さんの行動力には素直に凄いって思った。
< 66 / 181 >

この作品をシェア

pagetop