夜空へ虹の架け橋を

 美輝? 怜? なんでここにいるの? ていうか、ここは……どこ? わたし、また夢見てるの?

 両手で自分の頬に触れてみるが、確かに現実の感触がある。

 ということは、これまでのことが全部、夢?

 そんなはずはない。確かにわたしは慰霊碑のある場所からダム湖へと身を投げた。


「どうしたの琴音? もしかして寝ぼけてんの?」


 美輝が、きょとんとした声をあげる。


「ふふっ、昨日はあんまり眠れなかったのか?」


 隣にいる結弦が、こちらへ顔を向けて言った。


 結弦……? どうして、結弦がここに?


「ゆ、結弦……目が覚めたの?」

「寝てたのは琴音だろ? まるで俺が眠ってたみたいに言うなよ」


 ふはっと笑いながら話す結弦。


「琴音、ほんとに大丈夫? なんか顔色悪いよ?」


 美輝が心配そうに通路側から身を乗り出してきた。


「慣れないバスで酔ったんじゃねえのか? 美輝、水出してやれよ」

「はーい」


 怜に促され、美輝がごそごそとカバンを漁る。

 酔った? ううん、そんなんじゃない。

 これが現実だとしたら……そうだ、日付。今日は二〇二九年八月二十三日のはずだ。


 慌ててポケットの中のスマホを取り出す。

 それを見たわたしは、驚いて一瞬息を詰まらせた。

< 63 / 193 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop