ようこそ、むし屋へ    ~深山ほたるの初恋物語編~

お母さん七不思議

「自分が具合悪いことに気づかないなんて、ほんっと、ぼうっとした子なんだから」

 ほたるの額の冷却シートを交換しながら「しかもインフルエンザって。もう随分前に流行は収まったのよ。身体までぼうっとしてるんだから」とほたるの母がぶつくさ言う。

 今日は随分温かい日だな、と思っていたのは熱があったからで、クラス替えで仲良しのさなえちゃんとももちゃんと離れたショックで身体がズンと重いと思っていたら、熱があった。綺麗な転校生に見惚れて出した鼻血は、高熱でのぼせたせいだった。

「我が家はひいじいじを筆頭にお年寄りが三人もいるから、ほたるは隔離ね」
「え~~」
 熱が上がりきっているせいか、身体はダルいけれど案外元気なほたるは「テレビみたいのにぃ」と口を尖らせる。

 ほたるの母は「バカ言ってないで寝なさい。あとで温玉入りの味噌煮込みうどん作ってきてあげるから」と、ほたるの頭を軽く撫でて部屋を出て行く。

 いつもは「宿題しなさい」とか「予習しなさい」とかガミガミうるさいほたるの母も、ほたるがケガや病気をすると急に優しくなる。その奇妙な現象をさなえちゃんとももちゃんに話したら、二人のお母さんも同じだと言っていた。それでこの現象をお母さん七不思議の一つとして認定したのは去年のことだ。

 三人で考えたお母さん七不思議は、七つ以上ある。みんなに共通するものとそうでないものがあった。そうでないものは……。

 ほたるの母は勉強にうるさい。さなえちゃんのお母さんは挨拶にうるさい。ももちゃんのお母さんはお掃除にうるさい……で、……などと、つらつら考えているうちに、いつしか眠りについていた。
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