酸っぱい葡萄を甘くする
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久しぶりに外に出る。

夜の街はある意味個人に興味を持たないから気が楽だった。

マンションの裏手にある丘の上には公園がある。

そこまでいくのが今の私の仕事だった。

玄関前で、人の気配がなくなってからドアを

開けた。

それがひどく重いときと、軽い力で開く日がある。最近は春風が強くてドアを開けるのを諦めがちだった。

今日は右手でドアノブを押すと、風が押し返してくる。でも、開けない程の抵抗ではなかった。

鍵を閉めて、フードを目深に被る。
オーバーサイズのセットアップを着ていれば少しでも性別不明に近づけるかもしれない。


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