世界くんの想い人
家に帰ればすぐに世界がワイシャツを腕まくりをして、慣れた手つきで鶏肉と玉ねぎを炒めていく。

「世界くん、洗濯機まわしとくね」

「あ、ごめん。昨日忘れてた」

私はその言葉に、洗濯機のスイッチを押してから世界の隣に駆け寄った。

「私こそ、いっつも任せっぱなしてごめんね」

「全然!俺、洗濯物干すのも畳むのも好きなんで。梅子さんの新しいピンクのブラもツボっす。色々想像しながら畳むと二度と美味しいんすよね」

「変態っ!何考えて畳んでんのよっ」

「あのね、男なんてみんな変態ですから。もうできるよ」

世界がフライパンを器用にふりながら、綺麗に卵を巻いていく。世界は結婚してからまだ四カ月だが、こうして相変わらず私に手料理をふるまってくれる。

「お、今日もいい感じっすね。見て?」

「ほんとだ!綺麗!」

「愛情たっぷりで美味しいよ。座ってて」

世界がニッと笑うとプレートにオムライスを乗っけた。そしてすぐに自分の分の卵を巻き始める。

「どした?」

「あ、なんでもないの」

私はスプーンを二つ並べるとグラスに水を注いだ。

私は世界が私の為に料理を作ってくれることが嬉しい反面、いまやTONTON株式会社の海外マーケティング部長である世界に家事のほとんどを任せてしまっていることに最近罪悪感を感じていた。 

「梅子さん?ぼーっとしてどしたの?」

「えっ、いやうん。大丈夫」

「俺のもできたし、たべよ」

「うん」

向かい合って手を合わせるとスプーンですくって一口口にいれる。

「わぁ、絶妙!すっごくおいしい」

「ですねー。俺、料理人も向いてるかも」

「だね」

二人で笑いあうと私は、やっぱり心のもやもやを吐き出したくて、小さな声で口を開いた。

「えと……いつもごめんね」

「え?なんのこと?」

世界が切れ長の瞳を大きくするとキョトンとした。
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