主従夫婦~僕の愛する花嫁様~
「………」
そんな神と理亜の様子を見て、紅葉が雲英に言う。

「甲斐、アイスが食べたい!買いに行こ?」
目で合図をする。

「…………はい!
じゃあ、志岐と理亜さん。ちょっと席を外すから」

紅葉の手を引き、去っていく。


少し離れて、紅葉は神と理亜の様子を見る。

「甲斐」
「はい」

「迷惑、だったかな?」

「え?」

「なんだか、余計に雰囲気が……
二人は、絶対想い合ってると思うの!
二人とも大切なお友達だから、幸せになってほしい!
私の、ワガママかな?」

「紅葉様のお気持ち、二人にちゃんと届いてると思います」

「そう?」

「そもそも迷惑なら、誘われても来たりしない。
二人は、二人なりに素直になりたいとは思ってるんだと思います。
紅葉様は、このまま二人の背中を押すだけでいいのですよ?」

「うん!
…………じゃあ、あと少しだけ時間を置いて戻ろう!」
「はい!」



一方の神と理亜。

「………」
「………」

「………」
「………」
賑やかなはずの、BBQ会場。
しかし神と理亜、二人の空間だけはシンと静まり返っていた。

「……ん!焼けたぞ」
「ん。ありがと」

「………」
「………」

「……理亜」
「何?」

「“この前の話”俺、本気だから」

「え……/////」
神の真剣な視線が、真っ直ぐ理亜を捕らえていた。



“この前”とは、飲み会のこと━━━━━━━

『━━━━━理亜は、俺のこと“ほんとは”どう思ってる?』

『え?』

『俺は“まだ”理亜が好きだよ』

『は?』

『確かに俺、浮気何度もしたけどよ。
所詮、浮気だし!
“浮わついた気持ち”程度!
理亜のことは、本気だったんだぜ?』

『………』

『元々から女好きだから、可愛い子には声かけちまうが、ただ話す程度だし。
あ!言っとくが!
付き合ってる時、理亜以外とはヤってねぇからな!』

『え……!?』

『やっぱり、勘違いしてたのかよ……!?』

『でも、ホテル!』

『はい?だからぁ!
あいつが酔っぱらっちまって、ホテルに連れてっただけ!
寝かせてからすぐ出たっつったじゃん!』

『………』


『はぁ……
…………理亜。
もう一回、言う。
俺は、理亜をまだ好きだから━━━━━━━』





「━━━━━理亜の気持ち、知りてぇんだけど?」

見据える神の視線が、理亜に突き刺さっていた。
< 37 / 99 >

この作品をシェア

pagetop