失恋タッグ

後輩くんとデート?


土曜の朝。

私は朝比奈くんの運転する車で老舗の和菓子店へと向かった。

朝比奈くんの運転するSUV車は外国産でこの車種は、どう低く見積もっても、600万はくだらないものだ。


いくらうちの会社が大手のお菓子メーカーでそこそこのお給料を貰ったとしても、入社したばかりの朝比奈くんにとってはかなり思い切った買い物だ。


「お父さんは公務員って言ってたわよね…?」


「そうですけど…──
もしかしてこの車のことが気になってますか?」


それもあるけど…──。

朝比奈君は今日の服装は黒のフリースのセットアップに中に白のパーカーを着込んでカジュアルな可愛らしいコーディネイトだが、
身に着けているカルティエの時計はかなりの代物だ。


「叔父が会社を経営してて、それで就職祝いにこの車をプレゼントしてもらったんです。因みにこの時計も叔父がいらなくなったものをタダで譲ってもらったんです。」


朝比奈くんはハンドルを手に
前方に視線を向けたまま答えた。


「太っ腹な叔父をもったのね。
羨ましいわ...」



その叔父さんとやらは、就職祝いで甥っ子に
外車をプレゼントするなんて、そこそこ大きな会社を経営しているに違いない。

私なんてローンで買ったというのに...。



「先輩も運転するんですか?」



「うん。運転は好きな方よ。
私は食べ歩きが趣味だから、休みの日には一人でも車で出掛けるし──。
今日も遠いから交代で運転するつもりで来たけど、こんないい車に乗られたんじゃ、恐くて代われないわ。」


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