3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
その時、タイミング良く私の業務用の携帯が鳴り出し、すかさず鞄から取り出すと、そこには白鳥様の名前が表示されていた。

久しぶりに見たその文字に感動してしまい一瞬固まってしまったが、はたと我に返った私は慌てて通話ボタンを押す。

「お、お待たせして申し訳ございません。ご無沙汰しております」

あまりの嬉しさに声が震えそうになるのを何とか抑えながら、とりあえず平常心を保つことに努める。

「どうも。今度開催される東郷グループの懇親会パーティーですが、終了後楓様はそのままそちらに宿泊されるそうなので、部屋の確保をお願いします」

久しぶりの会話だけど、相変わらず余計な世間話など一切挟まず要件だけを伝える白鳥様。

けど、このやり取りも今では喜ばしい上、もしやと思っていた予感が的中したことに、雲掛かった空が一気に晴れていくような気分になる。

「はい!かしこまりました」

「では、よろしくお願いします」

快く返事をした後通話はすぐに切れてしまったが、私は暫く携帯を耳にあてたまま余韻に浸っていた。


「何か良い事でもあったの?」

すると、そんなやり取りを運転しながら一部終始隣で見ていた瀬名さんは、なかなか動こうとしない私にやんわりと尋ねてきた。

「あ、はい。もうすぐ開催される東郷グループの懇親会の後、楓様が宿泊されるみたいです」

私は気持ちが舞い上がったままの勢いで、満面の笑みで頷くと、何やら瀬名さんは突然真顔になり、丁度赤信号で車を停車させると、こちらをじっと見据えてくる。

「あ、あの……どうかされましたか?」

急に瀬名さんに見つめられてしまい、私は訳がわからないまま一気に心拍数が上がり始める。

「天野さん、もしかして……東郷様のこと異性として好きなの?」

たじたじになっているところ、今度は間違いなく桜井さんと同じ意味で尋ねてきた瀬名さんの質問に、私は顔がみるみるうちに真っ赤になっていくのが分かった。

「ちちち違いますっ!私は楓様の専属バトラーとして、またお仕え出来るのが嬉しいということでして……」

まさかお二人に指摘されてしまうとは。
これは、もはやそうなのではないかと、若干認め始めていく自分がいる。

けど、つい先程まで瀬名さんで気持ちがいっぱいだったのに……。

それに、例えそうだとしても、それでは絶対に叶わぬ恋になってしまうし、今日みたいな苦しみを味わうのは目に見えている。あるいは、それ以上かもしれない。

だから、好きだなんて、そんな感情は絶対に認めたくない。

……しかし、それならば、今のこの舞い上がっている気持ちは一体どうすればいいのでしょうか……。
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