3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
一般階層を担当していた私にとって、スイートルームに足を踏み入れる機会なんて滅多にない。

広さは120平米以上あり、中には書斎や広いダイニングキッチンとパントリーなどが配備されたり、浴室も広くて立派だったり、人が住むには十分過ぎる環境が揃っていて、いつ見ても圧巻だ。

なので、スイートルームが他よりも多い当ホテルは、東郷代表のご子息様のように、別邸感覚で利用されているお客様も多い。

このVIP階層に来ると、つくづく自分とは別世界の方達が集う場所なのだと、改めて実感させられる。


「東郷様。御注文して頂いた品をお持ち致しました。失礼ながら中へ入らせて頂きます」

中に入っても相変わらず反応がない為、私は小さく溜息を吐くと、気が進まない中部屋の奥へと進んで行った時だった。


「あん、楓さん。だめ……」

突如聞こえてきた、若い女性の艶めかし声。

その瞬間、私は自分の耳を疑った。


……え?

今の声は一体……?

気のせいかと思いたいけど、どんどんと近付くにつれて、その声は徐々にハッキリと私の耳に届いてく。

「そんな、激しくするなんて……」

嫌がっているような口振りだけど、声色は寧ろ喜んでいるように聞こえる。

何だか、とても近付きたくない、何なら今直ぐにでもここから逃げ出したくなるよう焦燥感に駆られるが、中に入ってしまった以上中途半端に投げ出すこともいかず、私はその声に恐れ戦きながら歩を進めていく。

そして、ついにリビングまで到達した時、目の前に広がる光景に、私は絶句してしまった。
< 14 / 327 >

この作品をシェア

pagetop