らんらんたるひとびと。~国内旅編~
 まるで、鬼ごっこをしているようだ。
 周囲の人達が何事かと、道路の端に寄って鈴様と女性陣を見つめる。
 このままだと、住人や観光客に迷惑がかかってしまう。
「鈴様のことですから、女性陣に武力行使をするということは…?」
 私とシナモンが同時にホムラさんを見ると「それは絶対にない」と言いきった。
「かつて、公の前で侯爵令嬢を投げつけた事件で。ドラモンド侯爵はきっちりと説教したから、女性に危害を与えることは絶対にない」
 どどどど…という地響きは、あっちこっちに行きわたる。
 ああ、面倒臭いわあ…と思いながら。

 私は、鈴様の前に仁王立ちをした。
 鈴様が慌てて立ち止まるが、
 勢いあまって、前方に身体が傾く。
 私は、両手で鈴様の頬を挟むと。
 触れるだけのキスをした。

「今は、私だけを見なさい」
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