離縁の理由は愛されたいと思ったからです
「侯爵様の恋人が結婚式の翌日に引っ越してきました。でも離れで暮らしているのは私の意思です。なので虐げられていると言うのは違います。侯爵様も夫婦として歩み寄りたいと言ってきています」

 でも歩み寄りたくない。言って良いのかなぁ。言わなくてもこの調子じゃ伝わるわね。


「その恋人とやらを愛人として囲うのか、第二夫人として迎えるのか……それとも別れるのか、」

 父がそう言うと母にジロリと睨まれ大人しくなった。


「ルーナ、貴女に結婚する時に聞いたわよね? 本当にいいの? って。あなたは、はい。と答えたけれど、貴女の顔は曇っていた……こうなることを知っていたのね?」

 ここまできたらもうお手上げだ! 契約のことは内緒にして言える範囲で言おう。きっと私が離縁した後貴族社会から離れると言うと悲しませてしまうだろう。

「はい。侯爵様は歳の離れた私のことを愛せないようで、以前から懇意にしていた女性と一緒になるとおっしゃいました。私との結婚は謂わばカモフラージュです。長い間婚約をしていて政略結婚ですから、結婚をしなくてはいけなかった相手だったのです。黙っていて申し訳ございませんでした」

 席を立ち頭を深く下げた。侯爵家との縁談が近いうちにダメになるのだ。謝っても謝りきれない。



「そうか話は分かった、ここはしっかりと今後どうするのか聞かせてくれ。父も母も私もこう見えて心配しているのだ。お前は変に家がどうのこうのと、考える必要は全くない。それを踏まえてお前の本心を知りたいと我々は思っている」


「お兄様……」


「ここに来て嘘はつくな、小娘の嘘くらいすぐわかるからな」

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