転生アラサー腐女子はモブですから!?
 幸せそうに笑みくずれるキースの顔を見て、アイシャの顔も赤く染まる。一年ぶりに再会した、あの夜会からずっと、キースの甘々な言動に振り回されっぱなしのアイシャは、どう振舞って良いかわからず焦る。そして、さらに甘さを増していくキースの言動に、男女の駆け引きに疎いアイシャが対処出来るわけもなく、顔を真っ赤にして、うつむくのが精一杯だった。

「アイシャ、顔が真っ赤だ。少しは、俺のこと意識してくれているって、思っていいのかな?」

「へっ? あっ……」

 キースの言葉に思わず顔をあげたアイシャは、横に座り優しい笑みを浮かべる彼と目が合う。頬へとかかった蜂蜜色の髪を優しく払ったキースの手が、アイシャの頬へと触れる。

「本当に、綺麗だ。この蜂蜜色の髪も、コバルトブルーの瞳も。そして、赤く染まった頬に、潤んだ瞳……、ねぇ、アイシャ……」

 頬を滑ったキースの指先が、唇をなぞる。その行為に、彼とのキスを思い出してしまったアイシャの脳は沸騰した。

(ひぃぃぃぃ、キース様って、キース様って……、あぁぁぁぁ!!!!)

「キ、キース様!! 人、人、人に会わせてくださると!」

「あっ……、そうだったな」

 甘い空気をぶち壊すアイシャの大声に、キースがやっと我にかえる。

「アイシャ、すまなかった。あまりにも、アイシャと過ごせる時間が幸せで、暴走してしまった」

 視線を逸らし、紡がれるキースの言葉は、最後まで甘い。

 耳を赤くしてうつむくキースと、顔を真っ赤に染めたアイシャの様子を、微笑ましく見守るメイドの皆さまという、ある種異様な空気は、ダイニングへと乱入した人物により、突如終わりを迎えることとなる。

「アイシャ、久しぶりだな!」

「えっ!? し、師匠!」



 
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