転生アラサー腐女子はモブですから!?

セス・ランバンの思惑

「何なのよ!! あの女は!!!! 私はこの世界のヒロインよ! モブでもないくせに……、キースもリアムも、私を差し置いて、アイシャ、アイシャって!! あぁぁぁぁ、ムカつく!!!!」

 部屋から聴こえてくるグレイスの金切り声に、セスの口元に浮かんだ笑みが深くなる。

(どうやら、計画は上手くいっているようだ)

 もうすぐ己の手の中へと堕ちてくるであろう少女のことを思えば、セスの笑いは止まらない。漏れそうになる笑いを堪え、荒れ狂うグレイスの奇行を影からつぶさに観察する。

 ドンファン伯爵といい、グレイスといい、血の繋がりはないはずなのに、どこか似たところを感じるのは、二人が根っからの悪だからなのだろうか。

 王城から遣わされた使者がもたらした命令書に、荒れ狂ったドンファン伯爵の奇行を思い出し、セスはそんなことを考える。

(王太子殿下も、酷なことをなさる)

 真の主人(あるじ)である王太子の顔を頭に思い浮かべ、苦笑をもらす。
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