転生アラサー腐女子はモブですから!?
 今でもあの日の事を思い出す。グレイスに刺され、血溜まりの中に崩折れたリアムの事を。

 生気を失い、閉じられていく瞳。
 徐々に冷たくなっていく体温。
 ドクドクと流れ続ける血。

 このままリアムの命が尽きると感じたとき、アイシャの中で何かが弾けた。

 リアムの傷口を押さえていた血濡れの手が青白く光り、気づけばアイシャ自身が輝き出していた。そして、手から溢れ出した光の粒が、リアムの全身を包んだ時、奇跡が起こった。

 温かい……

 生気を失い青白くなったリアムの顔に血の気が戻り、冷たくなった彼の身体が徐々に熱を持ち始める。リアムを助けたいと念じれば念じるほど、強くなる光の粒は、ドクドクと流れ落ちていった血を補うかのように、傷口から彼の体内へと入り、刺し傷までをも消し去った。

 徐々に力が抜けていく。

 漠然と死ぬのだろうと感じていた。

 それでもよかった。自分の命と引き換えにリアムが生きられるのであれば……

 そして、アイシャの意識は闇へと溶けていった。

 リアムはあの世界で幸せに笑っているだろうか?

――――、私の最期の望みは彼を生かすことだった。

「アイシャ、話があるの」

 ゆっくりと花畑を進むアイシャに、彼女の手を握っていた女の子が話しかける。

「なぁに? マリア。お腹でも空いちゃった??」

「いいえ。違うわ。時が近づいている……、貴方を元の世界へ帰してあげられる」

「えっ!? どういう……」

 パッと繋いでいた手を離したマリアがアイシャを見つめる。そして、アイシャがマリアへと声をかけようとした時、異変は起こった。マリアの身体が青白く発光し出したのだ。

――――この光って!?

 一瞬にして、小さな女の子だったマリアの身体が成長し、目の前には髪と瞳の色だけが違う、アイシャに瓜二つの女性が立っていた。
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