転生アラサー腐女子はモブですから!?
「二家から婚約の打診がなされた今、アイシャが白き魔女だろうと無かろうと拒否は出来ないだろう。ただ、アイシャに選択権はある。それが、せめてもの救いか」

「王家のノア王太子殿下がいないだけマシかもしれませんね」

「いいや、そうとも限らん。なぜ、今まで王太子殿下に婚約者がいなかったと思う?」

「王太子殿下に婚約者がいなかった理由? たまたま、その素養を持つ令嬢がいなかったとか」

「それなら、なんの問題もないのだがな。王家の歴史を振り返っても、時代の王太子は皆、リンベル伯爵家の娘が十八歳を迎えた後、婚約を発表している」

「つまりは、王家もアイシャを手に入れるために動くと」

「確実にな。古の契約には例外が存在する。白き魔女の意思の前には、全ての契約は無効となる。アイシャが、自らの意志でノア王太子を選べば、王家は白き魔女を手に入れることが出来るのだよ」

 ノア王太子に、キースに、リアムとは……

 誰を選ぼうとも、アイシャにとっては前途多難だろう。見方を変えれば、次世代を担うあの三人に求婚されている時点で、泣いて喜ぶべきなのかもしれないが、自由に生きて来たアイシャにとっては、是が非にでも拒否したいだろう。

「あの娘には、白き魔女の力について、話すつもりはない。これから、アイシャを取り巻く環境は大きく変わる。社交界デビューまでは猶予をもらったが、それ以降は容赦ないアイシャ争奪戦が始まる。ダニエル、どうかアイシャを守ってやってくれ。あの娘が恋を知り、愛を交わし、永遠を共にする伴侶に出会えるまで」

 本人が、今の状況を知れば裸足で逃げ出すな、きっと。
 あぁ、妹でなければ私が婚約者に立候補したいくらいなのに……

 アイシャが傷つかないようにサポートする事しか出来ない自身の立場が、ダニエルは歯痒くて仕方がなかった。


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