転生アラサー腐女子はモブですから!?
「おぉぉぉ、そなたが奇跡を起こした娘か!? 『さきよみの力』とは、あの伝承は本当であったな! 名は、なんと申す?」

「グレイスと申します」

 ピンクブロンドのふわふわの髪に、宝石のように煌めく緑色の瞳を持つ美少女は、目の前に立つ卑しい目をした男から視線を逸らし俯く。

 脂ぎった顔にタプタプのお腹の豚のような男に嫌悪を抱くが仕方ない。この男がグレイスの養父となり、この男からヒロインを解放する為に攻略対象のイケメン達が動くのだから、我慢するしかない。

「そうかそうか、グレイスと申すか。そなたは今日からドンファン伯爵家の娘として生きるのだ。お前の望む物は何でも用意してやろう。宝石でも綺麗なドレスでも」

 ドンファン伯爵がグレイスに近づき、欲望を滲ませた目で検分する。

(気持ち悪い……)

 嫌悪感で背筋が凍る。しかし、平民出の村娘では、この男に逆らうわけにもいかない。

「たしか白き魔女は純潔でなければならないのであったな。惜しいことよのぉ。ピンクブロンドの髪にエメラルド色の瞳、白き魔女でなければ可愛がってやれるものを。まぁ、純潔であればよいのだから……」

「ひっ!!」

 背後からドンファン伯爵に羽交い締めにされ、首筋を舐められたグレイスの口から、か細い悲鳴が上がる。

「まぁ、そう怯えるでない。なにも取って喰おうと思っておるのではない。わしはなぁ。綺麗な人形同士が睦合っておるのを見たいのだよ。お前の好みの男を選べばよい。『白き魔女』が狂う姿はさぞかし美しいであろうなぁ~」

 ドンファン伯爵の合図で入って来た男達に傅かれ、ベッドへと行くよう促される。右を見ても左を見ても、超がつく程のイケメン揃いに、グレイスの口元に自然と笑みが浮かぶ。

「そなたも気にいったようであるな。楽しむがよい」

 伯爵の言葉を合図に麗しい男達がグレイスにむしゃぶりつく。そして、与えられる快楽にグレイスは、己の痴態をドンファン伯爵が余すことなく見つめていることすら忘れ、快楽に浸った。

(はぁぁ……、ドンファン伯爵家に入るのも悪くなかったみたいね)

 グレイスは快楽に流されながら思考を過去へと飛ばした。
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