夢見る夢子は、元アイドルに運命を感じてしまいました!
「あ、あの…」

返事がない。



「あの…すみません。」

今度は、耳元でちょっと大きな声を出してみた。



「な、なに?」

男性は目を覚まし、頭をもたげた。



「あ、もしかして、あなた、熱が…」

「やっぱり、そうだよね。
昨日から頭は痛いし、体はだるいし、熱があるんじゃないかと思ってたんだ。
多分、風邪だな。」

「病院に行きますか?」

「いや、保険証がないからだめだ。」

「じゃあ、早く家に帰って横になった方が…」

「だから、早めに帰って来たんじゃないか。」

「え…?」

彼は不機嫌な顔でそう言ったけど、私には意味がわからない。



「あ、あの…ちょっと意味が…」

「だから…このベンチは、俺の家なの!」

「え……」



ってことは、まさかまさか、この人ホームレス?
嘘…こんなかっこいい人がホームレスだなんて、ありえない。



(そうよ、この人はこんなに素敵で……え??)



あれ?おかしいな。
なんか、この人、やっぱり以前、どこかで会ったことがあるような…



「……たっくん……?」

私が呟くと、彼は小さく舌を打った。



「もうっ!その呼び方、やめてくれないかな。」

「え、ええ~~っ!?」
< 4 / 192 >

この作品をシェア

pagetop