1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

「この1年、君はこの家で好きなことをしてくれて構わない。君が望むならドレスや宝石も贈ろう。君が望む限りの贅沢を与えたいと思う。それが僕の君への罪滅ぼしだから。その代わり、1年間は夫婦として僕とパーティに参加してもらいたい。一応、1年はそれなりに夫婦をやってみてやはり無理だったという既成事実を作りたいんだ。身勝手なことを言っているのはわかっている。だが……」

 長々と言いわけを述べる侯爵の言葉を途中で遮るように、アリアは言う。


「いいですよ」
「え!?」

 アリアがあっさりと承諾したせいか、フィリクスは呆気にとられたように目を丸くした。


「つまり白い結婚をお望みなのですね。今、流行(はや)っていますものね」
「え? あ、ああ……」
「私も、侯爵さまのこと好きでも何でもないので、その条件受け入れてもいいですよ」
「え……好きじゃない?」
「はい。だって昨日初めてお会いしたのに、どうやって好きになれと言うのです? これから夫婦としての時間を過ごして侯爵さまのことを知っていくつもりでしたが、それも拒否されてしまったので致し方ありませんね」
「ああ……そ、そうだな」

 特に動じることもなく、淡々とそう話すアリアと対照的に、フィリクスは少々動揺している。


「でも、よかったですわ。最初にそう言っていただけて。そのおかげで私は絶対に侯爵さまのことを好きにならずに済みますから」

 にっこりと満面の笑みでアリアが言うと、フィリクスは驚いた顔で言葉に詰まった。


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