1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

 アリアの心が妙に揺れ動く。

「お出かけをされるなら、奥さまは念入りにお支度がございます。お肌の保護(ケア)もしなければなりませんし、服装も動きやすくかつ夫人としてふさわしい衣装にしなければいけません」

 侍女のユリアがすぐに出かけられない正統な理由を説明してくれたので、アリアはほっと安堵した。
 しかし、ユリアはすぐに使用人たちに命令する。


「みんなで奥さまの外出の準備をするのよ! 急ぎなさい!」

 使用人たちは全員「はい!」と大きな返事をして即座に行動に移した。


「え……そこ、やる気出さなくてもいいのに」

 フィリクスがアリアに笑顔を向ける。


「アリア、ゆっくり待っているから急がなくてもいいよ」
「は? はぁ……」


 行くって言ってないんだけど!

 なぜか、周囲がフィリクスとアリアの仲を取り持とうと頑張っている。
 頑張らなくていいのに。


 アリアは嘆息した。


< 42 / 69 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop