カンパニュラ
chapter②
「陽翔、一度お見合いしてみない?」
久しぶりに家族5人が揃った食卓で母が‘らしくない’ことを言うので父も二人の妹も一斉に母を見た。
「陽翔の年齢になると順番にお話が回ってくるもの。何度かに一度は応えておこうかしら?と思って。あなた、どう思われます?」
「30過ぎで結婚してない人は男女ともに珍しくないが、陽翔の場合はこれから次々と話はあるだろうな。見合いをするのは、結婚の意思があることを世間に知らせるようなものだ。まずは会ってみても良し、全て門前払いのように断るも良し」
父はこれまでに聞いたことのあるスタンスで、俺に任せるということだな。
「お相手はどなた?」
早織が聞くと
「小野田製薬のお嬢さんよ」
と母が答える。
「母さんの顔もあるだろうから会う方向で考えるけど、返事は数日待って欲しい」
「あら、お兄さんは小野田製薬のお嬢さんを調べるつもりね?」
クスクス笑う詩織の言う通りだ。
「その通り。うちのどことも業種が被らない、取引もなく仕事上全く無関係というのは俺の結婚に対する絶対条件。製薬会社はそれに当てはまる」
「まずは第一関門突破ね。次は?」
詩織はとても楽しそうに質問を続けた。