幼馴染みとの契約交際が溺愛必須に変更されました。

 言われて、視線を手元に落とす。牛乳やらビールやらの液体商品、白菜やレタスなどの大きな野菜をまとめ買いしたので、確かに重いけど。
 「別に。慣れてるし」
 私の職場は数人の会計士が合同でやっている事務所。そこの事務担当だから、いろんな業務がある。書類整理や買い出しで重い物を持つことはしょっちゅう。だからそう返した、のだけど。
 「持ってやるよ」
 と言われるが早いか、食材が満載のエコバッグをひょいと奪われた。
 「え、いいわよ。あんただって同じでしょ」
 彼の右手には、私のエコバッグと同レベルに品物が入ったビニール袋。その上に左手で私の荷物を引き受けたら、いくらなんでも重すぎるだろう。
 自分で持つから、と奪い返そうとしたが、手が届く範囲外に避けられた。
 「同じじゃねーよ。こういうのは力ある方が持つもんだ」
 「だからって」
 「じゃあさ、礼に一杯奢ってくれよ」
 「はい?」
 思わずスマホの時計表示を見ると、まだ午後三時にもなっていない。こんな時間からお酒を飲むつもりなのか。
 じとっと見つめる目つきで察したのか、違う違う、と彼は首を振った。
< 3 / 48 >

この作品をシェア

pagetop