Beautiful moon
『あのね、木崎さん…ううん、美園さんで良いよね?』

名を呼ばれ、椅子に座る彼女をみれば、思いのほか真剣な眼差しを向けられた。

『私はあなたを責めるためにここにきたわけじゃないのよ。もちろんあなたにとっては、あまり聞きたくない話だろうから、そう受け止めるならそれでもいい。ただもうしばらく私の話につきあってほしいの』

視線を逸らすことなくジッと見つめられ、その真摯な瞳から切実なまでの強い意思が伝わってきた。

どの道先程の会話から、ここから戻る術は彼女しか知らないらしいのだから、従うしか選択肢は無いのだろう。

小さなため息と共に、了承のうなずきを返した。

『わかりました』

美月さんはその返事にホッとしたのか、また笑顔が戻ってくると、長話になるからと座るように促され、仕方なく彼女が座る反対の端に腰を下した。

木製の長椅子とはいえ座面にソファーシートが敷かれ、肘掛けも背もたれもある上に、柔らかそうな生成り地のクッションまで備わっていて、さながら女子会のようだ。
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