「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
「ううん。私がちゃんと確認しなかったのが悪かったの。だって、シリルはいつも私のこと大事にしてくれてて……おかしいなって思っていたのは、確かだから」

「ああ。フィオナは可愛いなあ……気が利かなくて、ごめん。そっか。フィオナは俺が手を出さないのが、不満だったのか……」

 そう言って彼は真面目な顔になって、私の顎を持って、親指をくちびるに当てた。

「……シリル? どうしたの?」

 その時にいきなり扉が開いて、私は彼を忘れていたことを、ようやく思い出した。

「……おい。そろそろ、功労者の俺に説明してくんない? 流石にあれで聞きに行ったら、どうなったのかは気になるだろ」

 ずかずかと無遠慮に部屋に入って来たルーンさんはさっきジャスティナが座っていたソファへと座り、長い足を組んだ。

「ごっ……ごめんなさい! ルーンさん……せっかく、言ってくれてたのに」

 きっと私からの説明を外で待ってて、いよいよ待ち切れなくなったに違いない。

「え? ルーン、フィオナに何て言ったの?」

「んー。泣いている人妻に離婚そそのかして、あいつと居るのがつらいなら俺と逃げようって言った」

「は? 死にたいのか?」

 私を抱きしめて剣呑な雰囲気になったシリルに、ルーンさんは不敵に笑って言った。

「やってみろよ。出来るならな……で? 傷ついた人妻連れて、国外逃亡かとそわそわして長時間待っていた俺に、どんな凝った事情を説明してくれんの?」
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