冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

炊事班長任命!

 騎士団員たちの朝は早い。日を跨ぐような任務につくものは別として、朝六時には基礎訓練が開始される。それに合わせ、セシリーとロージーは各居室の清掃を限られた時間で行わなければならない……ゆえに朝は、戦争だ。

「セシリーは(ほこり)落としと床掃きして、その後シーツの張替え頼める!?」
「わかりましたっ!」

 小走りで掃除用具やシーツを何枚も両手に掴み、セシリーは各部屋を往復していく。体力は使うが、単調な作業は精神的にはさほど苦ではない。

「げ、ロージーさん、床にお酒こぼされてるんですけど! 雑巾ってどこにありましたっけ?」
「ごめん下の掃除用具庫まで取りに行って! あたし今手が離せない!」

 その内の一室で、ブランデーか何かの染みを見かけたセシリーは扉から出て叫ぶが、ロージーは大量の洗濯物を抱えて通路の奥に走っていくところで、救援は頼めそうにない。
< 101 / 799 >

この作品をシェア

pagetop