冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

マイルズとの再会①

 セシリーの生家が経営するクライスベル商会は、ファーリスデル国内の多くの街に支店を置く、なかなかの規模の商会だ。

 本日セシリーは、王都にあるその本部に来ていた。ここでは一階は一般顧客向けの商品販売所や倉庫、二階以降は事務的な作業を務める商会員たちの作業所となっている。

「おや、セシリー様では無いですか。そちらの方は……」

 セシリーに対応してくれたのは、本部の支配人であるルバート・リドールという初老の男だ。クライスベル商会立ち上げの頃から尽力してきた、父も全幅の信頼を置いている人物である。

 その言葉を受け、彼の視線の先に立つ本日の同行者は、顔が見られにくいよう目深にかぶった帽子を取って、頭を下げる。

「お初にお目にかかります。私はファーリスデル王国魔法騎士団の団長を務めております、リュアン・ヴェルナーと申す者です」
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