冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「そうよぉ、なんでマイルズがあなたの言うことを聞いてあげなくちゃいけないの? その男の人も連れて、さっさと出ていってよぉ」

 この言い草にはさすがにセシリーも眉を吊り上げる。

「……いい加減にして。ここは公共の場よ。いかに高位貴族だとしても位を盾に自由を損害することは許されないはずよ!」
「は……うるさいんだよ。大した取柄もない女のくせに、僕に指図するんじゃない。どけ……!」

 マイルズの手が、セシリーの襟元を掴もうと伸びた時だった。

「止めろ……」

 いつの間にか立ち上がっていたリュアンが、その手首を寸前でつかんだ。
 ぎりぎりと絞めつけるその握力に、マイルズの顔が苦痛にゆがむ。
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