冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「放っておいて下さい!」
「このまま放置していくわけにもいかないんだよ。またなんかあれば、うちの責任にされるんでな。家まで送る。ったく、正騎士団の応援に回らされたと思ったら、とんだ外れくじを引かされた」

 『外れくじ』――その言葉の威力は、今のセシリーの頭を瞬時に沸騰させるのに十分で……。

「ふざけないで!」

 溜まっていた感情が一気に暴発し、彼女は次の瞬間彼の(ほお)に、思いっきり右手を叩きつけていた。

「……ぶはっ!?」

 パァン、と威勢のいい音がして、体をぐらつかせた青年から離れると、セシリーは強く目を見開いて絶叫する。

「あなたみたいな人、大っ嫌い! どうせ私なんか、お美しくて何でも持ってる魔法騎士様とは違って、紙きれほどの価値もないゴミみたいな女ですよ! でもね、それでも……私だって嫌なことだって、許せないことだって、あるんだからッ! そんな扱いされるくらいなら、助けてくれなくてよかったわよ!」
「なんだとッ!?」
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