冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

魔法の特訓②

「――なるほど。まずは内なる魔力を感じとるべし、それがすべての道に通ず……か」

 ひどい目にあった翌日も懲りずにセシリーは、キースから受け取った魔法使い用の教本に目を通し、魔法を学んでいた。

 体内に存在する魔力を感じ取れるようになったら、次は魔力自体を放出したり、体外から取り込んだりという段階に進み、それが自由自在に扱えるようになって初めて、魔法の詠唱や、魔法陣を描く練習、魔導具の作成といった専門分野へと進んでゆくと書かれている。

 教本にあった言葉を暗唱しながら、セシリーは陰鬱なため息を吐きつつ、気分が悪くなるのを覚悟で昨日の嫌なぴりぴりを思い出した。丁度鳩尾の裏から、体中に張り巡らされた網に電流が走っていくような感覚。

「う……うぅーっ!」

 額に脂汗を浮かべながら、唇を噛む。昨日と違って痛みはないが、確実に何かが体の中を移動してような妙な感覚がある。セシリーは集中したままそれが、体全体に広がり切るのをじっと待った。

 五分経ち、十分経ち……ふいに薄ぼんやりと、瞑っていた瞳の中が明るく照らされた感じがして、目を開く。そして、目の前にあった姿見を見る。
< 340 / 799 >

この作品をシェア

pagetop