冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
『実は、クライスベル商会のルバートという方から直接訪問がありまして、もしお伝えできる機会があるなら伝言をお願いしたいと。なにやら、「商会の経営に問題発生し、相談したき事あり。至急帰還されたし」とのことです』
「む……わかりました。もし彼に会ったらできる限り早めに戻ると言っていたとお伝え願いますか? あのような態度を取った後で不躾(ぶしつけ)ですが」
『いえ、お気になさらず……後日伝えておきましょう。では団長、くれぐれも早く帰られますよう。これ以上私の額の皺を増やさないでいただけると助かります』

 手短に宿の名前と場所を告げ、なんともいいタイミングで連絡を寄越したキースの声が途絶えた。

「さすがキース先輩……なんか僕、ちょっとあの人が怖いですよ。僕らの会話筒抜けになってるんじゃないですかね?」
「そんなこともないだろうが、あいつは間のいい男だからな……これで、うまくすればセシリーと会うことも出来そうだ。しかし、協力者とは……?」
「ふむ……ジェラルド様の知己なのか、それなりの身分の方なのでしょうな。では私も今の宿を引き払い指定された場所に移ります。失礼」

 思わぬキースの支援により、もう一度セシリーと会うチャンスが作れ、リュアンもラケルもほっと息を吐く。しかし、ふたりにはその協力者の見当がまったくつかず、オーギュストに続き店を出た後も首ばかりひねっていた……。
< 492 / 799 >

この作品をシェア

pagetop