冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「ありがとうございます」

 王太子に順々に挨拶すると、セシリーは次に隣で微笑んでいる聖女に紹介されたのだが……。

「あなたが、本来であれば月の聖女とガレイタムの王妃を兼務するはずだった、セシリー・クライスベルね!?」
「は、はあ……一応そう言うことになりますでしょうか」

 名乗る前からぐいっと顔を近づけられてペースを握られ、あわてて小声でもにょもにょ呟いていると、彼女は両手を伸ばしセシリーの手を取る。

「申し遅れたわ。わたくしがレオリン王太子と婚約し、太陽の聖女として認められたフレア・マールシルトよ。一応伯爵家に属する者だから、あなたとお揃いになるわね!」
「そんな……う、うちはただ爵位を買い上げただけの形だけで由緒も無い家柄ですから……!」
「あらいけないわ、そんなことでは! 一度人生の舞台に上がったならば、与えられた立場でも胸を張って精一杯務め上げないと! 一緒に大災厄に立ち向かうのはあなたと聞いているから、力を合わせて世界の平和を守りましょう。ガレイタムでの武勇伝も聞きたいわ、さあこちらへ、さあさあ!」
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