冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 しかし諭すように優しく言われたら、頷く以外なにもできなかった。今更ながら、役得が過ぎるのだ。もし自分が聖女としての力を持っていなかったら、きっと彼はこんな風には自分と接してくれていないだろう。

 甘くも苦い、そんな思いを打ち消すようにセシリーはあえて明るく言った。

「これが終わったら、私、一度ガレイタム王国に出かけてみようと思うんです。あ、そうだ……リュアン様、リルルの故郷って行ったことないでしょ。すっごく奇麗なんですよ。ガラスみたいに透明な湖の縁に、女神様の宿る木がバーンと立ってて」
「ほう? 俺も実は自分の国なのに、王都以外はほとんど行ったことないんだ。色々なことに決着が付いたら、少し長い休みを取って見て回るか……」
「気を付けて行って来てくださいね。私は、お母様のお墓とか、実家とか回りたいところが別にあるので……」
「なんでだよ。一緒に行けばいいだろ? 女の一人旅は危険なんだ。仕事を放ってでも付いて行くぞ」
(嬉しいな……でも)
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