冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

節刻みの舞踏会①

 節刻みの舞踏会当日……。セシリーは午後から準備に大わらわとなった。

 オーギュストが張り切ってオーダーメイドであつらえてくれたドレスは、濃紺の大人っぽいデザインで、肩と背中が少し大きめに開いていてドキドキする。胸元には花を模したフリル飾りが幾つも取り付けられ、大きく広がった袖口もグラデーションを付けたラッフルが何段も重ねられていてとても豪華だ。

「うっ――エイラちょっと締めすぎ。それ以上はきつい」
「何を言うのです~。せっかくの晴れ舞台ですし、あの魔法騎士団のリュアン様とご一緒に出席なさるのでしょう? これくらいは我慢、しないとっ」
「そ、そうよね。ううっ、でもそのくらいで……」

 コルセットをぎゅぎゅっときつく締められてセシリーは口元を押さえながら、昼食を軽めにしておいてよかったと胸を撫で下ろす。普段より二回りは細くなったお腹を見ながらペチコートを穿き、その上にドレスを身に付けてゆくが、なかなかしんどい作業だった。

 髪の毛もいつもとは違って、後ろに結い上げてまとめ、頭の上に少し大きめのリボン飾りを付けてもらった。顔全体に念入りに化粧を施すエイラの顔は真剣そのものだ。
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