冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

節刻みの舞踏会②

 一時間ほどの立食パーティーで用意されていた食事は、のちに本番である舞踏の時間が控えていることもあって、食べやすいサイズのカナッペや小さな皿に盛られた肉やサラダ、チーズなどのオードブルが多かった。

離れた一角には大皿に盛られたマカロンや背丈より高く積まれたクロカンブッシュなどまであって、テーブル席に座って語らう男女の姿もたくさん見られる。

「こらこら、あまり食べ過ぎるな。後に舞踏が控えてるんだぞ」
「だって……だって……、こんな料理たちを前にして指を咥えて見ているなんて拷問ですよ!」

 セシリーはお腹を大きく圧迫されているにもかかわらず、豪華な食事についつい手を出し途中でリュアンに止められてしまう。

濃厚でまろやかな海鮮入りホワイトソースが中に入ったパイとか、果実そのままの味わいを感じさせるようなシャーベットとか……こんなことで無ければ倒れる位お腹に詰め込みたい一品ばかりを目にしたセシリーが誘惑を断ち切るのは中々至難の業で、かなりの精神力を要した。

 そんなところに一組の男女が歩み寄って来る。
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