冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

目覚める暗黒(やみ)

 つい数時間前に送り出してくれたそのままの姿で、セシリーにとって実姉にも等しい人物は、こちらを見つめている……。

「お願いエイラ! 何をしているのかは分からないけど、今すぐその手を放してこっちに来て!」

 セシリーは彼女に向かって懇願した。だがエイラはセシリーを嗜める時と同じ顔でそれを拒む。

「これを見て何をしているのかというのはないでしょう? この《太陽の石》を壊そうとしている。それ以外になにか解釈がおありでしょうか? ねえ、皆様方……」
「その通りだな。リュアン、セシリーを下げてくれ。フレア……奴を排除する」
「ええ、わかっていますわ。ここで止めなければ、この国は終わる……」
「やめて! エイラを傷つけないで……!」

 叫ぶセシリーをリュアンが抱き寄せ、正方形の部屋の中心にいるエイラを左右から挟み込むように移動したレオリンとフレアが魔法を詠唱する。

「死にたくなくばその手を放し防御にでも徹していろ! 『光よ、我が手に集い、英雄の御剣を顕現せよ』、ゆくぞ!」
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