冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 だが、受け付けには誰もいない。昨日は落ち着いた雰囲気の女性が対応してくれたというのに……。

(あらら、誰もいないのね。困ったな……)

 どうしようもなく、セシリーは荷物を下ろすと周りを見回す。昨日は落ち着いて見られなかったが、さすが王国の騎士団、随分と品のよい内装だ。薄いベージュの壁紙に床はラズベリー色の絨毯が敷かれ、ウォルナットだろうか、渋い色の木材でできたどっしりとした受付台の真上には、落ち着いた感じのアンティーク調のシャンデリアが淡く瞬いている。

「よし、ちょっとゆっくりさせてもらおっと」

 いい雰囲気の調度品に囲まれ、緊張が和らいだセシリーは、脇にあったソファにゆっくりと身を沈めて深いため息を吐いた。

(ふぅ、会えば喧嘩(けんか)になっちゃうし。絶対あの人と私、相性悪いんだわ)
< 75 / 799 >

この作品をシェア

pagetop