冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

エピローグ

 窓から吹きこむ気持ちのいい風が、机の上の書類をめくる音がしている。
 魔法騎士団・執務室の団長席で――柔らかい日差しに瞼の上から照らされ、リュアンは目を覚ました。

「……眠ってしまっていたか」

 朝からずっと座り仕事を手がけていて、昼が過ぎた頃、少しだけと目を閉じたら意識が落ちていた。気付けに頬を叩くと、リュアンは首を左右に傾け肩を鳴らす。

 今、室内には誰もいない。キースが座っていたはずの机は、今は別の人物が使っている……。

 リュアンが、預かりものの手鏡で身だしなみを整えようとした時、執務室の扉が前触れもなく開いた。

「帰りましたよ。……団長、もしかして寝てました?」
「ね、寝ていないぞ……。何を根拠に言う?」
「涎の跡が左側に」
「な、なにっ!?」
「やっぱり寝てたんじゃないですか」
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