6月、高嶺の花を摘みに
少し思い出したことでまた気分が下がりそうになったので、それを紛らわすがためにメニュー表を手に取った。

たくさんのメニュー。

どれも唐揚げばかりだけど。

定員さんを呼んで注文し、カウンターに肘をついた。

少ししてドアのベルが音を鳴らし、誰かが入ってくるのを感じた。

ふと店内を見渡してみると、さっきよりも人が増えている。

もうそんな時間か。

また正面に向き直ってぼーっとカウンターの奥にいる店員さんの動きを目で追う。

私って、ぼーっとする癖があるのかもしれないな。

「おい」

突然隣から声が聞こえてほんの少しだけ顔を動かした。

知らない人だ。

私じゃない。

もう一度前を向こうと姿勢を整えると「お前だよ」とまた声が聞こえた。

これは、これは確実に私じゃないか。
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