元彼専務の十年愛
『ねえ、紗知はあれから恋愛してないよね?先輩のこと、トラウマになってる?』
「トラウマとかじゃないよ。ただ、いい縁に恵まれなかっただけで…」
答えながら息苦しくなっていくのを感じた。
恋愛なんて懲り懲りだと思っていたわけじゃない。
けれど、誰に対しても恋と呼べるほどの熱量は湧かず、恋愛から遠ざかっていたのは事実だ。
そこに颯太の影がよぎっていたのは否定できない。
ひとはそれをトラウマと呼ぶんだろうか。
そんなの、考えたことがなかった。
考えないようにしていたというほうが正しいのかもしれない。
沈黙を挟むと、愛花が空気を変えるように明るい声を出す。
『ごめん、変なこと聞いちゃったね』
「ううん」
しばらく他愛ない会話をして電話を切った。
自分から電話したくせに、消化するどころか何かが胸につっかえたまますっきりしない。
月日は確実に流れていき、それに順応しながら人は変わっていく。
愛花も、隆司先輩も、颯太だって同じだ。
それなのに…
私だけが、いまだあの日々に取り残されたまま。
「トラウマとかじゃないよ。ただ、いい縁に恵まれなかっただけで…」
答えながら息苦しくなっていくのを感じた。
恋愛なんて懲り懲りだと思っていたわけじゃない。
けれど、誰に対しても恋と呼べるほどの熱量は湧かず、恋愛から遠ざかっていたのは事実だ。
そこに颯太の影がよぎっていたのは否定できない。
ひとはそれをトラウマと呼ぶんだろうか。
そんなの、考えたことがなかった。
考えないようにしていたというほうが正しいのかもしれない。
沈黙を挟むと、愛花が空気を変えるように明るい声を出す。
『ごめん、変なこと聞いちゃったね』
「ううん」
しばらく他愛ない会話をして電話を切った。
自分から電話したくせに、消化するどころか何かが胸につっかえたまますっきりしない。
月日は確実に流れていき、それに順応しながら人は変わっていく。
愛花も、隆司先輩も、颯太だって同じだ。
それなのに…
私だけが、いまだあの日々に取り残されたまま。