元彼専務の十年愛
会話がふと途切れたとき、隆司がさっきまでよりも低いトーンで静かに切り出した。
「颯太、有沢のことなんだけど」
「…なんだよ、急に」
つい声に動揺が滲んだ。
「宇野が、颯太に有沢のことで話がしたいって言ってる」
「宇野って…サカマネの宇野愛花か?」
「そう」
信号待ちで、隆司が二つ折りの紙を俺に差し出す。
「宇野のアドレス。電話するかどうかは颯太の判断に任せる。宇野にもそう言ってあるよ」
躊躇いつつも、手を伸ばしてそれを受け取る。
去年ロスから帰ってきて隆司と再会した時に『紗知の話はしないでほしい』と言ってあった。
隆司以外の高校時代の仲間と連絡を取らないのも、彼女がどこで何をしているのかを知りたくないからだ。
理由は何かと問われれば、自分でもよくわからない。
ただ知るのが怖い。漠然とそれだけだ。
約束通り、今まで隆司が彼女の話をしたことは一度もない。
そんな隆司が紗知の名前を出し、ましてや宇野が絡んでいるのであれば、きっとよほどのことなのだろう。
昼間『有沢紗知』の名前を見つけたのも、きっと何か意味があってのことなのだ。
自宅まで待ちきれず、ごくりと唾をのんで覚悟を決めた。
「今、電話していいか?」
「ああ」
隆司の力強い返事に後押しされ、紙に書かれたアドレスをタップする。
どんな話が出てくるのか見当もつかず、死刑判決を待つような気持ちで電話の呼び出し音に耳を澄ませた。
「颯太、有沢のことなんだけど」
「…なんだよ、急に」
つい声に動揺が滲んだ。
「宇野が、颯太に有沢のことで話がしたいって言ってる」
「宇野って…サカマネの宇野愛花か?」
「そう」
信号待ちで、隆司が二つ折りの紙を俺に差し出す。
「宇野のアドレス。電話するかどうかは颯太の判断に任せる。宇野にもそう言ってあるよ」
躊躇いつつも、手を伸ばしてそれを受け取る。
去年ロスから帰ってきて隆司と再会した時に『紗知の話はしないでほしい』と言ってあった。
隆司以外の高校時代の仲間と連絡を取らないのも、彼女がどこで何をしているのかを知りたくないからだ。
理由は何かと問われれば、自分でもよくわからない。
ただ知るのが怖い。漠然とそれだけだ。
約束通り、今まで隆司が彼女の話をしたことは一度もない。
そんな隆司が紗知の名前を出し、ましてや宇野が絡んでいるのであれば、きっとよほどのことなのだろう。
昼間『有沢紗知』の名前を見つけたのも、きっと何か意味があってのことなのだ。
自宅まで待ちきれず、ごくりと唾をのんで覚悟を決めた。
「今、電話していいか?」
「ああ」
隆司の力強い返事に後押しされ、紙に書かれたアドレスをタップする。
どんな話が出てくるのか見当もつかず、死刑判決を待つような気持ちで電話の呼び出し音に耳を澄ませた。